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電波反射材の活用に関する産学官連携の共同実験に成功

無線機器を増設せずに5G無線システムの電波不達エリアを解消
2026年10月7日

石川県工業試験場
積水化学工業株式会社
国立大学法人電気通信大学
国立研究開発法人情報通信研究機構

石川県工業試験場(以下、工業試験場という)、積水化学工業株式会社(以下、積水化学という)、国立大学法人電気通信大学(以下、電気通信大学という)および国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICTという)は産学官連携による共同実験を実施し、電波反射材を活用することにより、無線機器を増設することなく第5世代(5G)無線システムの電波不達エリアを解消できることを実証しました。

背景

5G無線システムは、その高い通信性能とライセンスバンドの通信安定性などの特長により、産業用無線システムへの適用が期待されています。一方、高い周波数帯の電波は電波障害物の後ろへ回り込む回折現象が起こりづらくなるため、工場や物流倉庫などの産業用無線システムの活用が期待される現場では、さまざまな大型設備の影響によって電波が届かないエリア(電波不達エリア)が発生することが想定されます。電波不達エリアの発生を回避するためには基地局や中継器などの無線機器を増設する必要があり、導入コストがアップしてしまいます。無線機器を増設することなく低コストで電波不達エリアの発生を回避し通信エリアを拡大することが可能な電波反射材活用は、5G無線システム導入の投資対効果を高める技術として期待できます。工業試験場、積水化学、電気通信大学およびNICTは、電波反射材の効果を実証するために、産学官連携による共同実験を実施しました。

共同実験概要

積水化学が開発した次世代通信インフラ分野向け電波反射フィルム(以下、電波反射フィルムという)、電気通信大学およびNICTが開発したメタマテリアル電波散乱シート(以下、電波散乱シートという)の2種の電波反射材を適用した効果を、工業試験場に設置されている5G無線システムの基地局を利用し、工業試験場が開発した計測アプリを搭載した端末群を用いて評価しました。

電波反射フィルムは、信号強度の低下を抑えて特定の方向(正反射方向)に電波を反射させる特性(正反射特性)を有しています。一方、電波散乱シートは、電波の信号強度は低下しますが、広角に電波を散乱させる特性(広角散乱特性)を有します。これらの特長を生かし適材適所で使い分け、電波反射フィルムと電波散乱シートを以下のとおり配置しました。図1に工業試験場1階のフロアマップを示します。電波反射フィルムを2箇所に配置し、1階ロビーに設置されている基地局からの電波を2回反射させて、廊下および測定対象エリアである会議室の入り口に到達する電波の信号強度を大きくしました。さらに、会議室の入口付近に電波反射フィルムを配置し会議室内に電波が到達するようにし、会議室内に配置した電波散乱シートにより広角に散乱し、電波が会議室の広い範囲に亘って到達するようにしました。
図1 電波反射材の配置を示すイメージ図
図1 電波反射材の配置を示すイメージ図
図2は、会議室内の奥行5m×幅4.5mの領域の、床高1.7mの電波受信信号強度(単位はdBm)を、部屋の奥行方向1m間隔、幅方向0.5m間隔で測定した結果を示します。図2(a)は、電波反射材を配置しない場合の測定結果を、図2(b)は、図1のとおり電波反射材を配置した場合の測定結果を示します。電波受信状態の良し悪しを判断する際のおおよその目安となる受信信号強度-100dBmに対して、電波反射材を配置しない場合には全領域で受信信号強度が-100dBmを下回っていましたが、電波反射材を配置することにより全領域で-100dBm以上に改善したことが確認できます。床高の条件が異なる測定結果も含めた統計量として、受信信号強度が-100dBm以上の領域の割合は、電波反射材を配置しない場合は1%でしたが、電波反射材を配置することにより95%に大幅に改善したことが確認できました。これにより、電波反射材を活用することにより、無線機器を増設することなく低コストで5G無線システムの電波不達エリアを解消できることが確認できました。
図2 受信信号強度の測定結果の一例(4.5GHz帯)
図2 受信信号強度の測定結果の一例(4.5GHz帯)

今後の展望

工業試験場、積水化学、電気通信大学およびNICTは、電波反射材の活用に関する産学官連携の活動を継続・発展させ、産業用無線システムの市場拡大に貢献していきます。

問い合わせ先

イノベーションハブユニット
社会実装戦略室

佐藤 慎一